KASKの重要なパートナーのひとつであるINEOS Grenadiers。その前身であるTeam Skyの時代から、両者は協同して「名作」を世に送り出してきました。オールラウンダー、軽量性、空力追求モデルなどなど。空力は全てのモデルに共通した機能ですが、ラインアップには常に「空力番長」的なモデルが存在しました。そのひとつがINFINITY。ヘルメット中央に可動式のエアベントカバーを備えたモデルで、選手たちもコースプロフィールに合わせて愛用していました。
このINFINITYの後継モデルが、2021年のStrade BiancheでデビューしたWASABIです。INFINITYは通気性とエアロ効果に特化したモデルでしたが、WASABIが目指したのは「温度調整機能」と「エアロダイナミクス」。そしてINFINITYの通気性から踏み込んだ温度調整機能の要が、アクティブベンチレーション。いっけん、INFINITYのエアベントカバーのシステムと似ていますが、これこそがWASABIのコアテクノロジー。実際に使ってみて「なるほど、これはアクティブだ」と感じた次第。灼熱の東京自転車通勤で、弊社スタッフが実感した感想を簡潔にまとめてみました。WASABI、KASKのアナウンス通り、かなり快適です。
KASKに限らず、自転車のヘルメットは「穴だらけ」のイメージがあります。ベントホールが多ければ、その穴からサイクリストの頭が発する熱や汗が自然に排出される。誤解を恐れずにいえば、多くのヘルメットはベントホールよりパッシブな排気を行うことにより快適性を得るわけです。もちろん、自転車のヘルメットとは走行時にエアを取り込んで効率良く排気を行うものですが、それはベントホールありきの排気。しかしこれはエアロダイナミクスの観点で言えば、ヘルメット周辺の空気の流れが乱れることもあります。その点ではエアロダイナミクスに特化したKASKのMISTRALやBAMBINO PROなどが理想ですが、もっともこれらは用途が限定されます。そこでKASKが目指したのはロードやオフロードでも使える汎用性、そしてエアロダイナミクスを主体に開発されたのがINFINITYであり、WASABIです。
まず、WASABIのアクティブベンチレーションの開閉状態の比較をご覧ください。
左がアクティブベンチレーションのフルオープン状態。右が完全に閉じた状態です。フルオープン時は前面に大きく「U」の字にベントが出現。Uの字の真ん中にも横長のベントが出現します。右の全閉時にはともに閉じられるわけですが、Uの字部分にはわずかな隙間があります。これは精度が悪いのではなく、計算された隙間だと思います。エアロ効果に影響しない程度に隙間を設けることで、わずかでも全閉時にフレッシュエアを取り込むためでしょう。ご想像の通り、季節やライドの負荷によってアクティブベンチレーションの開け閉めを乗り手の意志で行うように考えられているものですが、全開・全閉の中間という、なかなか心憎い調節ができることも特徴。下の写真はスタッフが通勤で実際に使った時のアクティブベンチレーションの全閉・全開の様子です。この時のスタッフの感想は次の通り。
「自宅を出発した時点、朝の7時で気温はすでに30℃越え。試しにアクティブベンチレーションを全閉状態で道程の半分(10㎞)を走りました。意外や意外。身体が温まっていなかったこともあって、また、全閉でもヘルメット内にかすかに風を感じ、不快ではありませんでした。しかし10㎞も走ると、真夏の早朝でもさすがに暑さを感じてきます。そこでアクティブベンチレーションを一気に全開にしたところ『わおっ、オデコ、涼しっ!』と、ビックリ。アクティブベンチレーションの仕組みをざっくり言えば、前面2か所のベントホールから取り込んだフレッシュエアを後頭部に開いた大きなホールから排出するもの。試しに全閉時で走行中、後部のホールに手をかざすと何も感じなかったところ、全開時に手をかざすと排気された生暖かい風を感じます。なるほど、アクティブベンチレーション。その名の通りだ。オデコの涼しさを感じるとともに、ヘルメット内の温度が下がるのが体感できます。こいつ、暑くないぞっ!
また、涼しさに慣れてくると、内部の内側に設けられたメリノウール製のパッドを感じることが出来ます。これはオデコの部分と、上部前後方向に据え付けられていて、パッドの接地を頭部に感じるものの、それが不快ではなく良質なクッションのよう。そしてパッドの間をエアが通り抜ける感覚があるのです。ヘルメットも「快適性」を謳うメーカーが多いものの、WASABIのメリノウールパッドは飛びぬけて快適で、これだけでも『ああ、これが快適性か!』と思います。取外して洗うこともできるので、これもナイスなポイントだと思いました」
では、このアクティブベンチレーション、開閉はさくっと行えるのか?走行中に開閉するとしたら、それがストレスなくできることはかなり重要だと思います。スタッフはこの点も試してみました。
というわけで、スタッフが実際に使ってみた感想でした。WASABIはベントホールが露出していないエアロヘルメットゆえ、そのルックスから「夏向き」ではないように感じるかもしれません。しかし、コアテクノロジーであるアクティブベンチレーションは、走っていれば効率良くエアを取り込み、そして排出してくれるので、上手に使えば暑さに泣くことはないでしょう。それに今回スタッフが使用してみて実感したのは、WASABIの真骨頂は『オールシーズンヘルメット』であることだったと。夏の暑さとともに、賢明なサイクリストは真冬に頭が冷えることを知っているからです。夏場は走っていれば快適、冬は頭部のオーバークールを防げる。なるほど、確かにこれはストップ&ゴーが少ないヨーロッパ生まれだ。アクティブベンチレーションは、真夏に限らず、厳冬においても間違いなく効果を発揮するはずです。
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遊べるWASABI
機能とは関係ないのですが、WASABIはちょっとしたカスタムで遊ぶこともできます。
5色のカラーバリエーションは全てマット系で統一されていますが、全カラーKASKのロゴは控えめに、側頭部後方に同系色で記されています。アクティブベンチレーションのため、シェル表面にはスライド部分の溝や凹凸がありますが、グラフィックはありません。これはこれでシンプルながら優秀なデザインですが、ちょっとしたカスタムをしてみたくなりませんか?
そこで、弊社の取扱いブランドであるCampagnoloとDE ROSAのカッティングシートで遊んでみました。
こんな感じで。
今回は手元にあったカッティングシートを使ってみましたが、チームでオリジナルのシートを作って遊ぶのもよし、アーティスティックなデザインを施してみるのもよし、ワンポイントでデザインを入れてみるのもいいですね。
以上、第一印象よりもはるかに快適、まさにオールシーズン使えるWASABIのご紹介でした。あ、もちろんWSABIも厳格なKASKのテスト、回転衝撃に対するWG11もクリアしているので、安全性についてもご安心を。